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最高裁判所第三小法廷 昭和41年(行ツ)58号 判決 1967年6月20日

当事者

上告人(原告・控訴人) 石丸正男

被上告人(被告・被控訴人) 旧東与賀村長訴訟承継人

東与賀町長 碇壮次

旧東与賀村訴訟承継人

被上告人(被告・被控訴人) 東与賀町

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

論旨は、本件印鑑証明書の発行が東与賀村の印鑑条例に違反しないとした原審の判断には、同条例の解釈適用を誤り、採証法則に違背する違法がある、という。

右印鑑条例によれば、「印鑑の証明を受けんとするときは、本人役場に出頭し、所定の用紙に印章を押捺の上提出すべし。本人出頭すること能はざるときは、第四条の規定を準用する。」(九条)こととなっており、右準用に係る第四条は、「第二条の届出(印鑑の届出)は、本人出頭して之を為すことを要す。正当の理由により本人出頭すること能はざるときは、書面を以て届出を為すことを得。前項の場合に於ては、其の理由を明記し、別紙様式に依り印鑑符箋紙を貼付し、且つ、本村長に印鑑の届出を為したる二人以上の者本人の印鑑に相違なき旨を保証し、之に署名捺印することを要す。但し、保証人を得難き場合は村長に於て確実と認めるときは此の限りにあらず。」と規定している。本件石丸モンの印鑑証明書の下付申請は、石丸輝雄によってなされたものであるが、モンは高齢で病臥中であり、村役場に出頭できないのはもとより、文字も書けない状態であったので、東与賀村の印鑑事務担当係員が、慣行に従い、モンの居宅に赴き、直接本人に面接して下付申請の意思のあることを確認し、モンの代理委任状を徴することなく、本件印鑑証明書の発行に及んだものである。原審は、以上の事実を確定したうえで、右交付申請を代理人による申請と解し、右の事実関係のもとにおいては、本件印鑑証明書の発行は、本人の意思に適合したものであるから、その代理委任状を徴しなかった一事によって、前記印鑑条例に違反するものとはなし難いと判示していること、判文上明らかである。

ところで、前記印鑑条例第四条によれば、代理人をもってする印鑑証明書の下付申請は所定の委任状によるべきものと解すべきところ、その委任状を徴していない以上、本件証明書の発行は、右条例の規定の趣旨に違反するものといわざるを得ない。しかしながら、原審の確定に係る前記事実関係のもとにおいては、本件印鑑証明書の下付申請は、右印鑑条例にいう本人の申請と解することができ、本件印鑑証明書の発行が右条例に違反しないとした原審の結論は、正当たるを失わない。

されば、論旨は、結局、「判決ニ影響ヲ及ボスコト明ナル法令ノ違背アルコト」を主張するものではないことに帰し、排斥を免れない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 下村三郎)

上告人の上告理由

一、本件の判決は条令にない慣例で行った行為を条令違反でないと誤認し判定してゐる、慣例を以て行政が行へるなら議会も国会も不用、法も不用である。

東与賀村印鑑発行条令にも慣例で行っても良いと言ふ条令はない、故に条令違反は明白なる、それを裁判官は違背でないと判定せしが全く根拠のない判決なり。

二十才以上の日本人十人に聞いたが十人が十人条令違反と答えた。

二、地方自治法第七章第一三八条に地方公共団体の執行機関は当該並通団体の条例予算その他の議会の議決に基く事務並びに法令、規則その他の規程に基く云々とある如く慣例で行政を行ふそのものは自治法違反であり東与賀村の行為も自治法違反であり本件の行為は明に不法行為である。

三、庶務係及証人野中喜一は受取人石丸輝雄とは部落が(約三十家)同じ同年の学友であり訴外石丸モン(八十三才の高令で死去)の代理委任の意思確認は両者共謀の民法第二節第九十六条詐欺に因る意思表示の確認である。

訴外石丸モンは甲第二号証の如対外関係の渉外交渉は凡て上告人をして交渉、しょりせしめてゐた。

代理委任の件又野中喜一が亡母の処に来た事さえ実姉二人が亡母死亡一ヶ月前より日夜交代で附添看護してゐたにかゝわらず見たことも聞いたこともないと言ふし亦上告人も毎日の如く亡母の許に行ってゐたが一口も聞いた事はない。

其他兄弟三名生存してゐるが聞いたとは無いと言ふし石丸輝雄は甲第三号証の如き人間であってとても委任するとは考えられん。

特に亡母は七日正月の餅を食べてからは危篤状態で全く仮死状態で正常な意思はなかった。

四、例へ慣例で意志の有無を確認したとしても司法刑事でさえ重要証言は二人以上で聞かねばならんのに唯一人で確認したと言っても信ずる解にはゆかん。

国民に直接間接もっとも重且大なる印鑑証明書類である代理委任の確認を一人でするなど全く常識でも正当とは判断しがし。

庶務係野寺一の証言は偽証でありその証言を立証する証人もそれをうらがきする証拠も何ものもない、石丸輝雄と共同作謀であることは言をまたない。

甲第一号証の受取人不明は野中が自分で作成し自分で受取って石丸輝雄に渡したことは間違ないと確信する。

五、昭和四一年二月二十三日の証人出頭になってゐた石丸輝雄は遂に出頭しなかったのは前述の理由に依って出頭すれば上告人よりの反対尋問で作謀がばれるからと判断する。

六、民法第五章第七百九条故意又は過失に因る石丸輝雄、野中喜一共謀に依る不法行為が成立することは明である。

東与賀村印鑑条令を公務員として忠実に実行してゐたなら本件の如き事件も発生しなかったのである。

之を要するに条令にない慣例でした行為を不法行為と判決しないことは全く裁判官の齟齬であり日本国民にとってもっとも重要書類の一つである本件の如く条令に基くことなく公務員の不法行為に依り乱発されては家族争議は続き人々の争は死に至らせしめるのである。

一公務員の独裁で甲第一号証の如く受取人不明の侭へい然と明記し印鑑証明は有効として効力を発揮するなら本件の如き不法行為は各地に蔓延することは言を待たない。

追而本件の如く条令に無い行政を何ら違背するものでないとするなら上告人は日本の法をも条令をも無視し服守ししないであらうと茲に宣誓する。(編注-原文通り)

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